やがて帰ろうとして立ち上がり、竹の杖を取ろうとしても、杖は根がはえてしまって、ちっとも動きません。仕方なく杖をそのまま残して、家康は江戸のお城に帰ってしまいました。 それから不思議なことが起りました。王子権現の森から毎晩のように竹が飛んできては、この山に根づいて、たちまち大きな竹やぶになってしまいました。
人びとは、それからこの山を「権現山」と言うようになりました。そして「稲荷社」のわきに「竹の杖権現」のお宮をつくりました。この「竹の杖権現」は、板橋宿が盛んになるとともに、たくさんの人びとの信仰を集めて有名になりました。 今では、わずかに残っている藪の中に、小さな祠(ほこら)があって、稲荷様と権現様が一緒にまつられてあります。 ※参考資料・出典 「いたばしの昔ばなし」(板橋区教育委員会 発行)